広島大学大学院先進理工系科学研究科(理学研究科)構造物理化学研究グループ

Researches

機能性分子,超分子,ホスト−ゲスト化合物,分子・原子クラスターの気相分光

クラウンエーテルやカリックスアレーンなどに代表されるホスト分子は,高効率にかつ高い選択性をもってゲストを包接する機能をもちます。また有限個の分子,原子,イオンが集合したクラスターは,単分子あるいは溶液や固体などのバルクとは異なる,特殊な反応性や機能を発揮することがあります。本研究では,分子間相互作用により形成される分子集合体について,様々な分光学的手法や量子化学計算により,その構造や電子状態を明らかにしています。これらの情報をもとに,分子集合体が示す機能発現の起源を解明しています。

  • Inokuchi et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 12256.
  • Doi et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 4380.
  • Inokuchi et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 1815.
  • Kida et al., ChemPhysChem 2018, 19, 1331.

光励起状態の緩和過程

日焼け止め剤や光受容たんぱく質などは,吸収した光エネルギーを効率的に緩和させる,あるいは光吸収により異性化する機能が備わっています。本研究では,この機能がどのようにして発現しているのか,極低温気相分光,時間分解気相分光,低温マトリックス赤外分光,量子化学計算などにより明らかにしています。最近では特に桂皮酸誘導体について研究を進めており,緩和過程や光異性化に対する置換基効果,溶媒効果について系統的に明らかにしています。

  • Miyazaki et al., J. Phys. Chem. Lett. 2015, 6, 1134.
  • Yamazaki et al., J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 4001.
  • Kinoshita et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 2018, 20, 17583.

金薄膜に化学吸着した錯イオンの赤外分光

気相分光では,溶媒のない孤立系の分子,分子集合体について研究を行っています。しかし溶液中などで分子が発揮する特殊な機能の発現には,溶媒分子が深く関わっていることが示唆されています。本研究では,金薄膜に共有結合によって配位子を化学吸着させ,そこにイオンを含む溶液を添加することにより錯イオンを形成させています。この錯イオンの振動スペクトルを表面増強赤外分光法によって観測しています。この振動スペクトルにより,溶液中で錯イオンを形成する時の構造変化や,配位子のイオン選択性の原因を明らかにしたいと考えています。最近の研究では,他の分子・イオンを高効率でかつ選択的に包接することが知られているクラウンエーテルについて,そのチオール誘導体を合成し,金薄膜上に吸着させました。ここに金属イオンを含む溶液を添加することによって生成する包接錯体を赤外スペクトルによって検出することに成功しました。現在はこの研究手法を,f-ブロック元素を含む錯イオンへと展開すべく研究を推進しています。

  • Inokuchi et al., Chem. Phys. Lett. 2014, 592, 90.
  • Inokuchi et al., New J. Chem. 2015, 39, 8673.

凝縮相の放射光によるX線分光と理論計算による解析

凝縮相(液相,固相)における物質の性質は分子個々の性質を反映した集団としての振る舞いが決定付けています。温度,圧力,分子間相互作用により挙動は複雑に変化します。重要なのは着目した分子同士の相互作用,また水溶液のような系であれば分子と溶媒である水との相互作用を理解することです。我々は放射光によるX線分光法を用いてこれを調べます。内殻電子を直接励起する手法は元素選択的励起が可能であり,ねらった分子周辺の情報(電子状態,構造など)を反映します。さらに観測されるスペクトルを解釈するため理論計算による解析が必須です。我々は放射光によるX線分光測定と内殻領域の電子状態計算を用い,さらに正しいモデル構築をすることで物質の性質を解明していきます。

  • Nishida et al., Chem. Phys. Lett. 2016, 649, 156.
  • Nishida et al., J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 2017, 220, 96.
  • Takahashi et al., J. Phys. Chem. B 2017, 121, 11163.
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